2017/02/25
キミの瞳にヒットミー 感想

『キミの瞳にヒットミー』
戯画★★★★+
戯画の2017年第一弾『キミの瞳にヒットミー』コンプリートしました。
総評
学園ものエロゲでここまで満足したのは初めてかもしれない。魅力的なキャラクター、賑やかな日常シーン、小気味良く楽しませてくれるストーリー、そして眩しい青春がそこに詰まっていた。早くも今年のNo.1エロゲ候補の登場だ。全く完璧な、ハートフルラブコメディが好きなら必携のマスターピースに他ならない。
――というのは、ある1つの個別ルートのお話です。
このタイトルは定価9800円(税抜き)のフルプライスエロゲ。共通+個別4ルートという一般的な構成で、個別ルートのクオリティの差が大きく、最も出来の良いルートに他の3つは束になっても敵わない。
その最も良い個別ルートを抜きにすると、至って普通のキャラゲー。少しだけボリュームに物足りなさの残る、特別どうということのない無難な内容。
しかしヒットミーには彼女がいます。内容の多くは確かに平凡、確かに普通。でもそうじゃない一際輝く部分がこの作品にはあり、そしてそれがヒットミーを記憶に残る印象的なタイトルたらしめているのです。
学園ラブコメなノリが好きな人にはオススメ。とても楽しかった!
――以下、ネタバレ無しの長文感想へ続く。
シナリオ
文芸部のメガネ君が部員一人になって廃部の危機に陥っていたところ、ステキな生徒会長様に4人のはみ出し者を紹介してもらってなんとか寄り合い所帯として首の皮一枚つながったよ、さっすが皆の生徒会長! かわいい!
というお話。

メインストーリーは王道部活ものでございますね。個性的なメンバーが集まって、衝突しながらも仲間として絆を深めて……という学園青春コメディ。
うむ、そういうのすげー好き! 体験版でこれはと思ったものの、尻すぼみにならないか心配だったけれど、本編でもその雰囲気は続いて一安心。まあ共通はちょっと短いけどな。特に合宿な。せめて二泊くらいしようよ。
最終学年の春から始まって卒業までの約一年間が描かれます。こんなに作中期間が長いのは意外と珍しい。
共通パートで各キャラに焦点を当てる章を4つこなし、その途中で何度か選択肢(ヒロイン)を選んで個別ルートへ。
4つの内3つのルートは正直物足りない。共通もそうだし、個別も短め且つ内容もそれなり、腹八分目といった感じの。
しかし1つのルートだけは別。別腹。
共通パートのストーリーを踏まえた上でシームレスに個別展開に入り、丁寧に関係を深め、軽い起伏を随所に配置しながら描かれる主人公とヒロインの恋愛。特別何か大きな事件が起きるわけでもないのに、キャラクターとキャラクター同士の関係を描くことで決して飽きさせない青春ストーリー。エンディングがまた最高で、プレイを終えても「ついに終わってしまった」とは思っても、物足りなさは欠片も無い。
とにかくシナリオがとても上手い。ここまで良い学園ものは見たことないよ。一本の個別ルートが作品全体に及ぼすこの影響の大きさが驚異的。
若干エピソードがとっ散らかっているものの、シナリオの価値を貶めるほどではありませぬ。100点。
キャラクター
みこ>>>>>>瞳>つばさ>詩菜
ここまで勿体ぶってみました。そう、その最高な個別ルートの主は塚端みこ! まさかの普通&ツッコミ担当がナンバーワン・ヒロインだ!
いやほんと予想外。体験版やった時も、恥ずかしながらみこは眼中に無く、魔王さまかわいー瞳うんちーとか言ってたのに……みっこみこにされました。
青春したい普通の女の子と、そんな彼女と「普通に」恋する主人公。みこルートは、等身大の恋愛が描かれた、とても自然でリアリティのあるストーリー。また、個性的な後輩達と先輩後輩の信頼関係を築くことで、みこ先輩は優しくて頼りになる最高の先輩だ……! と思わせといて、勘違いでしたオチで落としにかかったりして飽きさせない。なんだかんだでとっても優しくていい子なみこ大好き。

普通の帰宅部だったみこが、一念発起して青春を目指した結果、よき仲間達と出会い、最後にはクサい台詞を堂々とのたまう青春キャラとなって卒業していきました……というお話だったのさ。紛れもない青春恋愛ものながら、コメディとして基本笑わせてくれるこのノリがすごく好き。ひたすら笑顔になるよ。
これ2回目だけどエンディングが、そしてエピローグがまた最高。めちゃくちゃ気持ち良く終われるから、みこルートは最後に攻略すべき。
瞳もつばさも詩菜もかわいいし、ヒロインとして不満はありません。でも、みこにかかったら3人とも赤子も同然、3人仲良く「みこ先輩を慕うかわいい後輩」になってしまうのです。さっすがみこ先輩!
おっと、胸の大きさには触れてくれるな。みこちゃん泣いちゃう。

詩菜が最も輝いていた頃
あとやたら目立つのが生徒会長の歩鳥。外見が明らかに童貞を狙ってるし、「攻略…したいです……」と言わせたいとしか思えないサブキャラクター。みこルートだと存在感も大きく、途中から歩鳥ルートに分岐してもおかしくないレベル。しないけど。ぐぬぬ。
コンシューマに移植されたらヒロイン昇格しそうなんだけど、役どころとしては、絶妙に「攻略できないことが自然なキャラ」なんです。付き合うとしたら物語開始時点で既に付き合ってるというか、そういう段階じゃないというか、元カノに近いアレ。ぐぬぬ。
声
瞳役の沢澤砂羽さんのダウナー系おもしろ演技が光ります。つばさ役の卯衣さんのネアカボイスも、詩菜役の香山いちごさんのゆるふわボイスもよいものです。
しかし個人的に最も印象に残ったのは、みこ役の柳ひとみさん。
めちゃくちゃ良かった。初めてこの人のお声を聞いたんだけど、セリフ1つ1つに魂こもってる感じがするし、テンション高めで超楽しげな演技が大変心地良い。なんだかすっごい輝いておりました。
柳ひとみさん、要チェック……というか最も好きな声優さんグループに一躍仲間入りでございますよ。これからアンケートの「好きな声優」っていう欄には(「波奈束風景」の後に)「柳ひとみ」って書くファンになりますよろしくお願いします。
あとつばさのクラスメイトの「魔王様~謁見の方が~」が妙に耳に残りましたw
パジャマ
ヒロイン全員パジャマ完備! やったね!
お披露目の場であるところの合宿イベントが一瞬で終わってしまった時は愕然としたものの、その後もちらほら出てきたし、ルートによっては2回目の合宿が開催されたので許した。部活仲間の女子のパジャマ姿……プレミアム!
おまけに先生(アラサー・独身)のパジャマっつーかジャージ姿まで! プレミアム……感はあんま無いけどOKだ! 書き忘れてたけど先生結構すき。微妙にダメ大人なところが。
システム
戯画のエンジン凄すぎない? 機能豊富で個性的で言う事無しだ。緊急退避画面も奇をてらわない真っ白のメモ帳という実用度。好感度高い。
おまけにヒロインを攻略するごとに、画面内に常時表示できるマスコットキャラが増えます。何この機能www邪魔www意味わかんないwww なんて思ってたけどこんな使い道が!?

こういう無駄機能大好き……///
ちなみに初回特典の追加エピソードの中身は、瞳のHシーン付き後日談と、サブキャラ明莉のイベントCGつきショートシナリオでした。悪くないけど無くてもいいかな的おまけらしいおまけ。
まとめ
ハートフルな学園ラブコメとして良い出来でした。
みこが飛び抜けているとはいえ、キャラゲーとしてはどのルートも及第点は超えているため、この作品の雰囲気が好きな人以外でも、お気に入りのヒロインがいれば問題無く楽しめるはず。
9800円のうち2000円くらいは設定資料集とサントラのお値段じゃないかしらと思わせる、微妙な物足りなさはマイナスだし、みこ以外のシナリオは悪くないとはいえ特別優れているわけでもない。
それでも、このエロゲを買ってプレイしてよかったと断言できます。楽しくて印象的なタイトルでした。
共通のノリでずっとこのキャラ達との部活生活を楽しんでいたかった。過ぎ去るのが早いのが青春とはいえ、もっと見ていたかったなと思わずにはいられない。
ところで、聞くところによると、みこルート担当のシナリオライターは陸奥竜介さんだそうな。
これからアンケートの「好きなシナリオライター」っていう欄には(「保住圭」の後に)「陸奥竜介」って書くファンになりますよろしくお願いします。
――陸奥さんメインシナリオの新作マダー?(・∀・)

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23:28
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