2018/08/05
抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか? 感想

『抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?』
Qruppo★★★★★
新興ブランドQruppoのデビュー作『抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?』略して #ぬきたし コンプリートしたので早速レビューをば。
総評
セックスは人に見られない所でするもの――私達はそう強く信じているし、現代社会ではそれが正義だ。
その常識は「ドスケベセックスを強く推奨する」という異例の条例が敷かれた「青藍島」では通用しない。公然とセックスをしない者は疎まれ、排斥され、官憲に引き渡されて刑罰を受ける。この島ではそれが正義だ。
このゲームのプレイヤーはそんな異常な島の有り様を笑う。島民の下品な言動を笑う。ゲームのテキストはコミカルに面白おかしく書かれており、実際にバカだなあと笑いながら楽しくプレイできる。
しかし、このエロゲは抜きゲーではない。エロい箱庭世界での愉快なドスケベイベントを消費者に提供することのみを目的としたゲームになってはいない。『抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳(わたし)はどうすりゃいいですか?』という題名通り、常識が逆転した島に生きるキャラクター達、マイノリティの生の歩みを描いた物語なのだ。
18禁でしか許されない題材、オフィスではとても口に出せない言葉を存分に用い、綿密に練られた構成と丁寧な作り込みによって提供される渾身のエンターテインメント。『ぬきたし』は、あらゆる面でプレイヤーを楽しませてくれる、この10年間で最も優れたエロゲの内の一つとして多くの人の記憶に残るだろう。
――以下、ネタバレ無しの長文感想へ続く。
シナリオ
ところ構わずドスケベセックスが強制される島に移住してきた処女厨主人公とその仲間達がドスケベ体制に反発するお話。
派手な設定からもわかる通り、基本的にギャグがメインです。
背景CGでモブが青姦してるし、武器はアダルトグッズだし、最後の最後まで下ネタを忘れない。ルートによっては地平線の彼方までカッ飛んだ力業で強引にまとめていたりもする。エロ同人みたいなドスケベテキストだけでなくギャグ全般が面白い良コメディでした。
キャラクターの魅力も非常に強い。
主人公が実に好感の持てる男で、フェイスウィンドウに常に顔が出てくることもあって存在感抜群。前髪で目が隠れていたりもしない。と同時にHシーンでは顔が出てこない空気が読める奴でもある。愛嬌があって優しくて熱血な淳之介君は、最高のエロゲ主人公でした。

ツッコミ時のこの真顔すき
ヒロインもサブキャラクターもシナリオ全体を使って掘り下げが為されていて、誰もが見せ場を用意されています。捨てキャラが全くいない。顔無しモブキャラにすら愛着が持てる。そのおかげで、コンプリートした後ももっと彼らと付き合っていたくなるのです。
それでいてストーリーも面白い。
主人公たちがやっているのは、基本的に島のドスケベ勢力から逃げ回る大げさでコミカルな帰宅部。それが「謎の少女」を中心とした島を取り巻く大きな流れに関わることになって――というストーリー展開。
体験版=共通ルートの時点でほんのりほのめかされた物語の面白さが予想を上回る規模と質で繰り広げられてゆず茶ご満悦。じんとくるシーンもある。戦闘シーンや熱い場面も多々ある。単なるドスケベコメディには終わらず、物語として楽しめるエロゲになっておりました。

そこら中でドスケベセックスが繰り広げられる常夏の島は、エロが好きな人にとっては天国のよう。けれど、ドスケベ条例はあくまで島の中に限定されたものだから「常識」は依然存在する。不特定多数との性行為を忌避する者や性的マイノリティにとってのそこは猛獣の檻の中に等しい。抜きゲーみたいな島に住んでるから皆幸せですなんてことはなく、どうすりゃいいか思案しなければいけない人もいるし、島の内外で様々な歪みも生じてしまう。
主人公の結成した反交尾勢力「NLNS」がドスケベの魔の手と戦い抜いて勝ち得たもの。孤独な童貞が仲間たちと絆を育んだ末に手に入れたもの。それはゲームのビジュアルのように、輝かしい青春のように、爽やかで明るく、ロマンに溢れた前向きな――
最初は「なにが孕めオラだよ……(ドン引き)」と真顔でプレイしていたのに、コンプした今「この神ゲーをどう褒めちぎってくれようか」と筆を執るほど気に入ってしまった、常人には到底為し得ぬ常軌を逸したシナリオが、最高に面白かったです。

ただし、本作はどこまでいってもギャグが土台のバカゲーの類であって、いくら内容が良いといっても名作シナリオゲーという感じではない点に注意。
口リが銃を装備した相手に無双したり、全くの素人が強制的に発情させる結界を張ったりといった、緊迫した山場で「それはいくらなんでも」と思わせるシーンが展開されます。設定からして荒唐無稽なので今更何が起こってもおかしくはないのだけれど、実は地に足の着いたところが多々あるストーリーなのに、あくまでギャグですよと釘を刺してくる印象を受けました。
とことんコメディに徹する、そのこと自体は別に悪くはないけどね。
キャラクター
ヒロイン全員かわいい。サブヒロインも全員かわいい。彼女らがいるだけでどうあれ青藍島は楽園です!
わたちゃん先輩こと渡会ヒナミ。ちっちゃくてチョロい口リお姉ちゃんかわいい。その小さなお胸にははかり知れぬ母性が詰まっており、年上口リにバブみを感じてオギャりたい諸氏にとっての救世主、天使のような女の子です。ムードメーカーとしても戦力としても、その小さな身体からは想像できないとても大きな存在。わたちゃんにはずっとそのままでいてほしい。すき。
正妻オーラのすごい奈々瀬。見た目はギャルなのに気が優しくて家庭的というあざといギャップ萌え……いいと思います! 淳之介と息合いすぎだしもう結婚しちゃえよってアサちゃんが言ってた。超同意。最終ルートでは奥さんポジション奪われてたけどそこが逆に身を引いた貞淑な元妻みたいでイイというか何というかなのだわ。すき。
よそのエロゲではお目にかかれない系ヒロインの美岬。身体つきがエロいだけの地味キャラかなと思ったら、やたらファンキーでクレイジーなオナブタだったでござる。作中でも言われてたけど登場人物の中で一番イってる気がする。個別ルートがあまりにも常軌を逸していて作者の正気を疑いました。(褒め言葉)
エロいし面白い、ぬきたしを体現するかのようなヒロインでした。すき。
淡色の髪の少女。この子健気すぎて保護欲ヤバイし一家に一人欲しいしとにかくとてもかわいかったです。 彼女の笑顔にヤられたプレイヤーは多いはずだぜ。むべむべ。
他のキャラとの絡みが少なかったからもっと見たいです、FDか何かで。すき。

敵役の女の子たちにもしっかりスポットライトが当たっていたのは嬉しい誤算でした。
特に礼先輩はやべーですね。わたちゃんルートの礼先輩は大変やべーですね。この人のせいでもうSSを敵視できなくなっちゃいますよね。礼先輩とハッピーエンドでいちゃいちゃするお話見たくない? 見たい。すき。
最初は毛ほどの興味も無かった女部田と生徒会長もすきになってしまいました。少ない描写でいちいちグッとこさせるのが上手すぎるんだよこのゲーム。ぬきたし非処女's Side の発売まだー!?
そして妹のアサちゃん。ビッチギャルと兄が大好きな毒舌甘えん坊煽り厨のアサちゃん超かわいい。アサちゃんのためにこのゲームを予約買いしました。すき。
なのに、めちゃくちゃ出番多くて目立つのに、お姫様みたいな展開もあるのに、徹底した非攻略キャラという謎の不遇さよ。スタッフは反妹主義者なの? 物語のテーマ的に妹は対象外とかそういうアレなの? あっ、わかったぞさてはFD要員だな! デビュー作なのにおのれこざかしいことをしおってアサちゃんがあらゆるキャラとのHに乱入してくる妹3P追加ディスクまだー!?
公式サイトのキャラ紹介に載っていない、主人公以外の男衆もかなり良かった。モブキャラのシューベルトくん、なんかすき。
CG
CG鑑賞モードの枠は全部で80。
わりと癖のある絵柄ではあるものの決して悪くない。特に立ち絵や通常シーンのCGは良い感じ。でもHCGは塗りも含めてもう一歩かな。
お気に入りCGは、M24(?)ライフルを持つ淡色の髪の少女、壁尻×3、奈々瀬添い寝、わたちゃんエンド、見抜きわたちゃん、睡眠中わたちゃん、温泉、眠る着物少女、戦闘シーンカット全般。
声
全ての声優さんにお疲れさまと言いたい。よくこんなトチ狂った台詞を収録できたなァと思うものが大量にあってw

Oh...
どのキャラの声も素晴らしいものでした。花マル。
個人的には特にアサちゃん役のそらまめ。さんのおもしろ演技が新鮮で印象的。また、礼先輩役の水野七海さんの実力を初めて認識できました。そして柳ひとみボイスを存分に堪能できて大変幸福。ありがとうございました。(ふかぶか)
H
まさかタイトルに「抜きゲー」という文字があるから抜きゲーだなんて思っていた素直すぎる子はいないと思うけれど、ぬきたしは抜きゲーではありません。言い換えると、Hシーンの充実度や濃さは平凡。ストーリーの流れの中で行為に及ぶシーンが多かったですね。
ただし中にはかなり尺が短いものもあって、このライターはエロゲのHシーンをリアルタイムでオカズにはしないのかな? と思うことも。
総シーン数は27。
通常の和姦Hの他に、3Pや青藍島ならではの奇抜なHも有り。印象的だったのは「大勢の観客の前での公開セックス、からのTV放映」という処女厨らしからぬシーン。びっくりした!
パジャマ

アサちゃん以外のキャラにもパジャマがあるとは! 神ゲーにはパジャマがつきものとはいえ、これまた嬉しい誤算。
特にサブヒロインのものがクリティカルヒット。これだよ。そこまで親しくない女の子の不意打ちパジャマ、余所行きでないプライベートな隙だらけの姿……! あるべきタイミングでごく自然にお披露目されたそれに、そのプレミアムな輝きに、パジャマニア(造語)を代表して心からの感謝を。
システム
演出が少し凝っています。戦闘モードになるとアリアドネー・プロトコルなるシステムが起動して画面も口調もそれ用に変化。メリハリが効いていてすごく上手いやり方ですね。とても長いゲームなのに飽きずにプレイできたのは、こういう要所要所でのムードの切り替えが為されていた影響も大きそう。
エンジンは椎名里緒という一般的なADVスクリプトエンジン。なのに、戦闘シーンで異様にエラー落ちする問題有り。一回だけブルースクリーンまで発生しました。
公式にお知らせが出ていて、演出が重いシーンでは他のアプリ(ブラウザやSteamなど)を落とせとのこと。確かにSteam起動してたけども……Steam名指しって初めて聞いたぞw (環境: Windows 10 64bit, i5 6600K, GTX 1080 Ti, メモリ16GB)
ゲームにならないレベルで症状が発生したので、サポート情報に従って"NUKITASHI_support.exe"の方でプレイしてみたら、それ以降エラー落ちはありませんでした。遊んでて違いもわからなかったし最初からこっちで起動するのをおすすめ。
まとめ
簡単に言うと、笑えて萌えて泣ける面白いエロゲ。これらの要素を全て満たすことに成功したものになんてそうそうお目にかかれません。二兎を追って二兎を得た感じの、ある意味とても豪華な作品。どこまでいってもギャグなのが若干台無しにしてる感もあるけれど、ここまでやってくれれば名作と言って差し支えないと思います。
かなりクセの強い常軌を逸したシナリオは人を選ぶかもしれない。でも、このエロゲに興味を持つような人間は既にある程度選別されているため、万人におすすめと言ってしまっていいはず。万人におすすめ!
日本が世界に誇るエロゲというものの持つパワーを存分に感じられます。これほど楽しくて凄いと思わせる作品は本当に数年に一本レベルでございますよ。
お話は完璧に完結しているから、これ以上は蛇足だったり難しかったりするのかもしれない。でもキャラクターが魅力的すぎてまだまだぬきたしを楽しみたいと思ってしまう。
ともあれ、Qruppoさんのこれからに期待です。新作でも何でもいいからまた新しいエロゲを作っていただきたい。一作出して半年後に公式サイト消滅なんてイヤだかんね!
FDマダー?(・∀・)
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©Qruppo
14:04
レビュー
| Comments(4)
元々気になっていた作品だが…この文章の影響にて購入決意。
充分過ぎる程…作品への思い…受け取りました…(*´∀`*)
あざす! そう言って頂けると、我ながらチョロインみたいにベタ褒めしてるなあと思いながらも恥を忍んで感想記事UPした甲斐がありました!
本当に面白いタイトルなので、きっと後悔はしないと思います。お楽しみあれ!(*´∀`)
Oh. ありがとうございます、すっかり忘れていました!
リストに追加するのいつも忘れるのでご指摘大変助かります。