2012/08/24
創世奇譚アエリアル 感想
![]() Amazon.jp | 『創世奇譚アエリアル』あかべぇそふとすりぃ 発売日:2012/7/27 ☆☆☆☆- |
『創世奇譚アエリアル』コンプしました。
「アルテミスブルー」がすごく好きだったので、ロボットものはあまり趣味ではないのに
熱いシナリオに期待して購入。その結果や如何に。
総評
まさに期待通り、でした。とても熱くて面白かったです。
しかし同時に、予想の斜め上をいく部分もかなり目についた作品でした。
お話はすごく良い。やはりとても実力のあるライターさんだと思います。
ベタな展開ながら王道ゆえの安定した面白さ。展開がわかってるのに、熱くなったり
涙腺が決壊したり。
演出も動きが多くて豪華、ボイスは他に類を見ないくらい力の入った演技。
全体的に、とても質の高い作品だと思います。
ただ、おそらくプレイする誰もが感じるであろう説教臭さが大変アレ。
これはもうやりすぎの一言。(゚Д゚)。それはさながらウザい熱血教師のよう。
それと、複数ヒロイン攻略可にしたことが逆に足を引っ張った感も。中途半端なマルチ
エンドにするくらいなら一本道でいいよー。やるならグランドエンドをくれ!
結局、面白いのに変に印象が悪いという大変残念な結果に。
人間ドラマ、成長物語としてはかなりオススメできます。絶望の世界に生きる人間
たち。副題に「What a beautiful people」とつけたくなるような。
ロボット要素はあまり強くないので、SFロボットものを期待すると肩透かしに感じる
かもしれません。主役はあくまで人間です。
――以下、(たぶん)ネタバレ無しの長文感想へ続く。
シナリオ
地表は全て水没、おまけにSPOOKなるバケモノがひっきりなしに攻めてくるでござる
という近未来の地球。どう見ても無理ゲーです。
しかしそんな絶望的時代でも、だからこそ、人間は強く逞しくなれる。どんな逆境でも
人は前に進むことができるし、そうするべきなのだ! というお話。
とても前向きで美しい人間賛歌。わりと理想主義的な内容でございます。
「人間とはどう生きるべきか」というテーマが「筋金」の如く物語全体にビシッと
通っていて、ことあるごとに表に顔を出します。これはアルテミスブルーで比較的水面下
に隠れていることが多かったのとは対照的。
このテーマに沿ってキャラクターは動き、成長し、物語の結末を迎えます。
そこで大きな問題が一つ。
登場人物誰もが語りすぎw いつでもどこでも語る。こんだけ言っておけば誰でも作品の
テーマがわかるだろうとばかりに語りまくる。
シュウ兄貴曰く、「人に何かを与えられる人間になれ」 「『筋金』の通った大人になれ」
「醜悪な『子供大人』になるな」「『大人』になることを時代に強制されるのは幸せだ」。
頻出単語:娑婆っ気、筋金、子供大人。はいここテストに出ますよー。
こういうことは繰り返し言うものだ、という気はする。するけど、それでもやりすぎ。
シュウだけがうるさかったり、主人公がそれに感化されるだけならまだしも、「大人」の
誰もが同じようなことを語るんです。露骨すぎやしませんかw
何かこう、ライターさんの親切心というか何というかなアレを感じます。
たぶん悪評はほとんどこれのせいじゃないかなぁ。作品としての良し悪しと関係無く、
これのせいで嫌われてノイズだらけになってしまっている印象。もったいない。
ルートはほぼ一本道で、ヒロインごとに微妙に途中の展開とエピローグが変わる構成。
複数ヒロイン攻略可にしたのはサービス的な意味合いがあったのかどうか。結果は正直
失敗してます。中途半端です。
やるなら、よくある「周回するごとに真相に迫り、最後にグランドへ」的な形式にした方が
よかったんじゃないかしら。一応3人攻略後にエピローグ追加があるのだけれど……
あれで終わりは無いわー。
人間の強さ、軍人の生き様、キャラクターの成長なんかの描写は、すごく楽しめました。
心震えたし涙も出たし読後感も良好。基本的に出来が良いんです。ほんとに。
アルテミスブルーの空の原因が明かされたのも嬉しい。
でも、本筋以外のところで色々とマズった感がありました。それもたぶんワザとやってる
のが始末に負えないw
キャラクター
ルートのあるヒロインは、未来、柏木さん、涼子さんの3人。
ただし、シンとシュウのダブル主人公です。(婉曲的な表現)
ゆず茶のお気に入りは柏木さん。柏木さん大変素敵。が、大敗北な気がする。というか、
基本的に全員大敗北な気がする……! キャラ萌え目的ではキツイ。
あまりエロゲ的ではありませんね。予想されたこととはいえ。
星海凪。この娘の扱いはちょっとかわいそう。
まさかの個別ルート無しですよ。グランド=凪エンドが欲しかった。
一応エピローグやHはあるものの、コレジャナイ感が強いです。
未来というキャラはちょっと面白かった。
依存心の強いヒロインはこんな世紀末状態だとどうなるのか、という。
今回のビッチ組は、ケイト、鹿島先生、リリエンソールの3人。うち、ケイトとリリエンソール
の2人が洋モノ喘ぎw これはエロゲ史的に貴重なサンプルだとおもいます。(・ω・)。
そんな彼女らの誰よりも輝いていたのがシュウ。
お説教成分の出所の大半もシュウw 彼の筋金論がどこから来たのかは、1万年後も最大の
謎であるとか。(嘘)
「エースは後ろに回りこむ! さあ尻をこっちに向けろ!」
という最高の名言を残してくれた空のエース、シュウ兄貴マジ英雄。
そんな英雄の弟なだけに、シン兄貴もドSのアナルマニアだったりします。
女みたいな顔で家事しながら、尻に突っ込むことばかり考えてるんだぜ……。(誇張有り)
まぁ彼の性癖はさておき、主人公として立派に成長する姿は胸にくるものがありました。
特に、第7章の終盤は涙無しには読めない。( ;∀;)。
強力な涙腺破壊力を有しているのは何もメインキャラだけじゃありません。ASDFの士官達は
どいつもこいつも……( ;∀;)。
ぶっちゃけ彼らの必死の戦闘がこのゲームで一番面白かったです。ロボなんて邪道。
あと、本作にも幼女がいました。まるでアリーみたいな可愛い幼女。
ただ今回は出番はあまり無く、おまけ程度のキャラ。まぁストーリー的に妥当なところです。
声
どのお声もやたら気合の入った演技でした。素晴らしい。
気合入りすぎて一部シーンで音割れしちゃってるのはご愛嬌。(´・ω・`)。
男性キャラがすごく良かったです。ダンディーだったり熱かったりカッコよかったり泣けたり。
やっぱりおぐおぐさんこと小倉結衣さんのお声はこわい。(良い意味で)
この人にサスペンスホラーをやらせたらえらいことになるんじゃないかしら。
それと、本作の最大インパクトは金松さんの洋モノ喘ぎ。面白かったです!
また、「NIGHT BAT」(前線指揮)の女性オペレータがまきいづみさんなのですよ。素敵。
CG
涼子さんが不安定w どうしてこうなった。
また、キャベツなんとか大尉が適当すぎる。軍人っぽく短髪にしておけばよかったのにー。
他は基本的に問題無くお綺麗ですね。
未来、柏木さんなんかはとってもかわいかった。川原誠さんのファンになりそうです。
システム
アルテミスブルーから目に見えて進歩したのがシステム、演出。
・強制オートが無くなりました。(・ω・)b。
・演出が派手になりました。(・ω・)b。
ビジュアルの豊富さも含め、見せ方はほとんど文句のつけ所の無い出来だと思います。
まとめ
「面白かった」という意味では間違いなく良作。ただ、テキストや説教臭さや個別ルートの
仕様が人によって結構な減点になりそう。評価の難しい作品です。
「熱いロボットもの」という前評判からすると個人的には大当たり。
「アルテミスブルーのライターの新作」という意味では若干残念な出来でした。斜め上に
はっちゃけてしまったでござる。
なんだか、若干マイナーながら良質な映画から、ハリウッドのド派手な娯楽映画になった
かのようなイメージ。エンターテインメントとしては良かったけれど、と。
良い部分は物凄く、たぶんエロゲの中でも最高に好みの部類なので、もちょっとこう、
スムーズにしっとり楽しませてほしかったです。
ともあれ、普通よりも楽しめたのは確か。良いヒューマンドラマでした。
凪ルートマダー?(・∀・)

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