2014/04/16

ひこうき雲の向こう側 感想


ひこうき雲の向こう側
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『ひこうき雲の向こう側』


FLAT
発売日:2014/3/28


☆☆☆☆++


年度末に現れた傑作『ひこうき雲の向こう側』コンプしました。

総評

途中まで綺麗で面白い良いエロゲという印象だったのが、全て終わらせた今では、
もう! 何コレ! 何なのこれ! 卑怯すぎるだろヽ(`Д´)ノウワァァァン!!
という感じ。
最後の方の怒涛の攻勢にやられ、コンプ後の余韻と脱力感みたいなのの影響で今後のエロゲライフが危ぶまれるプレイヤー続出に違いないよ。

と、それはひとまず脇に置き――

この作品はとにかく「恋愛」に焦点をあてた真面目なエロいゲーム。「恋って何なの?」 その問いかけが一貫して主軸となっていて、とてもテーマ性の強い作品に仕上がっています。年がら年中、恋する若者達のアレコレを愉しんでいる我らえろげーまーですが、これほどに正面から大真面目に恋について扱った作品に出会うことは珍しいと思うんです。

全体的にシナリオや構成は高クオリティでとても上手く、プレイ後の余韻も凄まじい。
ただ、1つのエロゲとして見ると、非の打ち所の無い名作とまでは言えませぬ。CGは不安定だし不具合も目立つ。シナリオもわりと適当なところあるし、エクストラシナリオの最後なんかは蛇足である。

けれど、それを補う面白さ、良さがあって。
とりあえず体験版を最後までプレイしてみれば、「どうも凡百の萌えゲーとは違うようだ」ってのがわかると思います。
エロゲ初心者にも、フツーのエロゲに飽きた人にも、わりと万人におすすめ
ほら、ネタバレ見ちゃわない内に買ってプレイして一緒に脱力しようぜ!(横たわりながら)

――以下、ネタバレ無しの長文感想へ続く。
シナリオ

※瑛莉ルートは最後にプレイするのを超推奨

ライターが『辻堂さん』『つよきすNEXT』のさかき傘氏ということで、過去作に比べるとドタバタは控えめではあるものの、相変わらず日常シーンは軽快で面白い。日常ゲー・キャラゲーとしてまず安定しております。

そんな楽しげなラブコメを土台に繰り広げられるのは、恋した子が妹になってしまったでござる男と、何でもできるけど恋だけはさっぱりわからんちん女(+その他かわいい子達)の恋愛劇。

恋する人、恋に迷う人、恋を未だ知らない人、恋を諦めた人、恋を支える人。
時に役割を変えながら、彼らによって描かれる恋愛模様は、空のように色んな表情を見せるけれど、いつも戻るタイトル画面のBGM”止まない雨はないから”に象徴されるように、最後にはとても優しくて綺麗で。連綿と続く輪を紡ぐものは、いつだって素敵なものであるはずだと。
恋愛の俗っぽい面も負の側面も見せながらあのエピローグやエクストラを持ってきた点は、王道とはいえめちゃ好みで高評価でございます。


今までのさかきシナリオといえば、友達とダベったりバカやったり、不良の抗争に巻き込まれたり、尻穴を執拗に狙ったり、といったものばかりでした。しかし今回はちょっぴり切ない青春恋愛物語。これがとっても新鮮。こういうのも書くんだなぁ的な。
でもやっぱり賑やかな青春イベントとかは相変わらず、素直に楽しい。バベキュは楽しい。
メインのストーリーは自分の好みとは外れるのに、読んでいてスッと入ってくる自然さはさすがです。一文一文は短いのに異様に情感たっぷりだったり心響いたりするテキスト、めちゃくちゃ上手いと思うんです。

ただ、キャラクターの心情描写は案外微妙かもしンない。
例えばヒロインが主人公を好きになる部分は、切欠や理由は明示されなくともなんとなくわかります。恋ってそういうモンだよね的アレもあり。でも、「ああ、この子は本当に主人公の事が大好きなのだなぁ」と思うことは、ほとんど無かった。各自がキャラ付けを確認した後に動いているというか、キャラクターを観測している感じというか。
上手く言えませんが、その良し悪しは別にして、恋をテーマにするならもうちょっと溢れる感情を見たかったという気持ちはあります。たぶんこれはマイナーな意見、無視すべき戯言です。(弱気)

それと、エクストラのラストは蛇足だと思うんです。突然でびっくりしたw 何者だよあいつ。
ああいうのはもっと伏線バラ撒いてからやってよね! 好きな展開なんだから!///


ともあれ、この作品の魅力の多くはシナリオにあると言えそうな、つまり良シナリオゲー。久々だ!
もっと大量の予算をかけて上手く売り出せば、2014年を代表する名作、祝・萌えゲーアワード大賞! みたいな結果になっていた気がする。そこまでするにはテーマがちょっと地味かな?

しかし、積んでる普通のエロゲを崩す気が全くしなくなる効果があるのは大問題ですw コンプ後の喪失感や脱力感がハンパ無い。いわばメンタル破壊注意ゲー。そこまで泣けるわけじゃないから、ただただ呆然としてしまう。ハフー。

キャラクター

いろは>綾ちゃん>>>里沙>美奈≧潤≧瑛莉>>>杏

僕はいろはちゃん!(´∀`)!
眼帯ミステリアスガール、中二病の痛い子かと思ったら、案外ノリの良い優しい子だったでござる。これはコロッといくわーあざといわーおのれー。
食べ物をはむはむしている姿や子供っぽいところが実にかわいい。なでなでしたい系女子。
個別ルートは若者らしく身体から始まる恋なんだけど、いろはの個性と絡めて、驚くほどきれいなイメージのお話になっているところがお気に入り。最初に攻略して一気に引き込まれました。
メッセージイラスト配布キャンペーンではもちろんいろはを選択。いろはかわいいよいろは。

綾ちゃんもスーパーかわいいんだけど、サブってことで控えめに……。
結婚したいです。(真顔)
一番賑やかな子で、何故か妙に懐いてくれて、キツい思いをしている時に傍で励ましてくれる……これはコロっといくわー作者の思う壺だわー。ノータイムで選択肢を選んでいたら綾ちゃんエンドになったのは私です。
場面選択のシーン名が一人だけおかしいのもかわいい。(●^o^●)

告白女子の佐藤里沙は理想的な女の子でした。ベタベタな黒髪マジ天使さん。
綾ちゃんと同じく、攻略はできるもののオマケ扱いで物足りないのは残念ではある。でも、この子じゃ話広がらないだろうなーとも思う。普通の平和なエロゲにしかならなさそうで……まぁそういうのでも一向に構わんけども!
佐藤さんと一緒のキャンプのシーンが大好きです。外でそこまで親しくない女子(美人)たちと一晩過ごして朝食、しかも向こうが女子力発揮して作ってくれたりして……なんだか超ときめくよね。ね。

妹の美奈はまさしく妹! って感じでした。(おわり)
加えて言うなら、美奈は義妹より実妹の方がそれらしかった気はする。話のとっかかりは崩れちゃうけど。妹になる前の記憶が兄妹どちらもしっかりしてるから、禁忌って感じがちょっぴり弱かったんです。

潤。男の娘、ではなく男の子。
クリア後の今では、精液とおしっこのイメージしか無いです。不憫な……。
あ、瑛莉エピローグでは不覚にもウルッと。普段から主人公ともっと仲良くなって欲しかったな。

杏ちゃん(とそのお仲間)は、紛うことなきクソキャラでございましたね!(満面の笑みで)
完璧といえる憎まれ役っぷりも、ビッチ具合も、実に期待通り。すっごい張り倒したい!
でも見た目は可愛いし、いろはルート最後の杏ちゃんならイケる気がする。(ドキドキ)

そして、瑛莉
センターヒロインであり、メインヒロインでもあり――
そのアクの強さと性格の悪さは極めて好き嫌いが生まれそう。授業中に人の鼻毛を抜いてきたり、男の股間を見ながら爆笑したり……こんなひどいヒロインなかなかおらんぜw
好きかと問われるとウーンて感じなんだけど、でも嫌いにはなれない。個性の塊でとんでもない存在感があって。それにネタバレな事情にネタバレなストーリーもあって。BADもTRUEも個別ルートのエピローグが実に沁みる。
この子はちょっと言葉にしにくいアレで、なんかもうダメ。虚脱感しか無いわ今w


いろはの「むふー」のかわいさは異常。上原あおいさん良い仕事しすぎです。(・ω・)b。
美奈役の秋野花さんも、好きなタイプの秋野花さんでした。こういうアホの子演技いいよね~。
ハマり具合では綾ちゃん役の松田理沙さんが一番かな。
派手さはないものの、全体的にボイスは完璧だったと思います。

CG

公式サイトのTOP絵とサンプルCGを見比べてみてほしい。不安定さがわかると思うw
塗りも原画もクオリティはいまひとつ。
とか言いつつ、個人的にはわりと好きだったり。いろはと綾ちゃんかわいいし。杏とか絶妙だし。

総CG枚数は107枚
ただし一部特殊なやつが混じってるので、体感的には2割くらい少ない。
というか、その特殊なやつの使い方がハンパないんだけども。とても面白い試み。

音楽

BGMが雰囲気に合っていてなかなかよろしい。
特にタイトル画面のBGM”止まない雨はないから”が、切なくて綺麗で、大変素敵。サントラ欲しくなるレベル。
曲名がパロネタ満載なのはちょっとイヤw

システム

不具合多め
進行不能になるような致命的なバグは無いものの、謎の文字列がテキストに混じったり、立ち絵やフェイスウィンドウの指定ミスなんかがちらほら。誤字脱字も多い。この辺の手の回ってなさはすごくもったいない。修正パッチが何個か出ているので、最新バージョンではマシになっているかな。
ちなみにパッチVer2.0までは綾ちゃんの鼻が消失するという重大なバグが!

体験版では上書きセーブ不可という謎仕様だったのが、製品版では可能、普通になりました。でもロード画面とセーブ画面で並び順が左右逆になっているのはどうかと思います。(´・ω・)。

場面スキップ系のショートカットキー(SHIFT+N~B)を使うとウィンドウ下部にシークバーが出現するという裏技有り。これ地味に便利なのに何故か隠されています。場面スキップ系は結構バグいからかな……w 誤って初期化しないよう注意。

まとめ

傑作の部類だと思います。予想よりも何割か上の出来でした。

けれど、どこか軽かったり脆さが感じられるし、CGが弱く不具合が多いところも足を引っ張って、不朽の名作には至らず。それほど好きな題材じゃないってのもあるかなー。

それでも、この作品をプレイして得られる体験は唯一無二、素晴らしいものでした。
と同時に、プレイ後の脱力感も大変なものでした。……。(ぼんやり)

真摯に恋愛を扱った物語、青春、といった要素に興味を覚える人、普通の萌えゲーに飽きを感じている人、エロゲには詳しくないけど最近のオススメをプレイしてみたい人などにはかなりおすすめ。単純に話としても面白かったしキャラも良かったです。
それに今回は構成もめちゃ上手かったなぁ。アッこれきっと製作者の敷いたレールの上を走ってる! 悔しいッでも楽しいカワイイ! って思いながらヒロイン攻略してたしw
もちょっと作品自体のクオリティが高ければ殿堂入り神ゲー認定でした。惜しい。

天体学部+学生会コンビと行くいちゃラブ仙台牛タン旅行FDマダー?(・∀・)




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