2015/05/27
花の野に咲くうたかたの 感想
![]() ![]() | 『花の野に咲くうたかたの』あっぷりけ 発売日:2015/3/27 ☆☆☆☆++ |
『花の野に咲くうたかたの』オールクリアしました。
総評
うむ、悪くない。
まったり穏やかなムードを基本に小さな事件にいくつか遭遇して、という内容もその出来も事前予想通り且つ期待通り。
が、強い魅力とインパクトに欠けるとも。ストーリーもその他の要素も抜きん出た何かがあるわけではなく、全体的に大人しい印象があります。
小さくまとまった良作というポジションでございますね。
個別ルートがあっさり、エロが短い、という看過できない点もあります。
まあ、「桜花ゲー」であることは発売前にメーカーサイドが強調していたし、エロに関しても察することはできる。とはいえ、桜花以外のヒロインの内容に過大な期待をしないよう注意はしたい。
肩肘張らずリラックスしてプレイするべきエロゲです。基本まったり、ほどよく起伏があり、ほんのり切ない……そんな少し落ち着いたお話を楽しみたい人におすすめ。
また、お泊まりパジャマにびびっとくる人にもおすすめ。超おすすめ。
――以下、ネタバレ無しのネタ長文感想へ続く。
パジャマ
はなのの発売前イベントに参加した時(→参加レポ)、ライターの桐月さんを拝見して「絵に描いたような好青年だなあ」と思ったのを覚えています。その時はただ外見とトークからそう感じただけですが、はなののをプレイして、やはり行儀の良い人だと確信しました。
> 「寝てる間に、千歳がパジャマを着せてくれていてね。着替えている所だったんだ」
これは作中、主人公が桜花の着替えシーンに遭遇した後の彼女の台詞です。ここから読み取れる重要な事は、着替えを見られ一時動揺した桜花が自身の変化に戸惑いつつもいつも通りに落ち着こうとしているとかそういうアレではなく、千歳の人柄です。
相手が幽霊(的存在)であって、服の汚れとか汗とかそういうモノを心配しなくてよくても、疲れて眠っている女の子をパジャマに着替えさせてあげる。その行動の背景には千歳が優しく家庭的な結婚したい系お姉さんであるという事実の他に、「寝る時はパジャマを着る」という彼女の「常識」があります。そのまま寝かせるとか胸元を緩めてあげるとか適当に主人公のシャツを着せるとかではなく、いつ用意したのかわからない桜花の(あるいは千歳や汐音の)パジャマを着せるという選択は、「寝る時にはパジャマ」という「当たり前」が無いと、なかなか出てきません。これはそのまま書き手にも言えることであり、桐月さんの行儀の良さがこの台詞から垣間見えるわけです。
さらに、麗奈と雫の個別ルートの後日談ではパジャマHがあります。
二人とも主人公の住処である桜花荘に泊まりにきた時の話ですが、立ち絵に存在しないパジャマがここに出てきた理由は、やはり「お泊りにはパジャマ」という「当たり前」です。イベントCGはリソース節約のために制服でも私服でも裸でもいいのに――実際そういうゴマカシをするエロゲはごまんとあるのに――各人にパジャマを設定し着せている。このことから「当たり前」というよりもむしろ「べき」に近いと言えます。「お泊まりの時にはパジャマを着るべき」、それがはなのの世界の掟であり、はなのののライターあるいはディレクターの密やかな主張なのです。
その2つのうち雫のパジャマHシーンは特に素晴らしいもので、
お泊まり会の夜に皆で寝ようとしている中、何故か主人公が雫の布団の中に隠れることになり、他の子に見つからないよう雫の股間で息を潜めていると……
という流れから始まります。ちょっとえっちな少年漫画のラッキースケベによくあるアレです。
これがTo L○VEる等ならエロいことにはなっても射精までいくことは稀ですが、ここは18歳未満立ち入り禁止の大人の世界。股間 in パジャマを存分に楽しんだ後は、えいやっと脱がしてぱんつの上からクンクンペロペロ、さらにそれも脱がして「隣で人が寝てるのにエッチしちゃう」シチュを最後まで貫徹します。あんまそういう露出系シチュ好きじゃないのよねとかそういう性的嗜好のずれなど、学園の美人生徒会長とのお泊まりパジャマHの前では塵芥。真実は無く、全ては許されている。
また、このシーンには選択肢があり、何もせず布団から出て部屋へ帰ることもできます。その場合はもちろんエロ無し。パジャマHを楽しむには、あえて雫の股間で「いたずらしちゃう」を選び、確固たる決意を示す必要があるのです。
ここが漫画やアニメのラッキースケベと大きく違うところで、一見無意味に思えるこの選択肢の存在は、待っていればスケベが降ってくる甘やかされた子供時代はとうに過ぎ去り、大人は自ら行動する必要があるということを教えてくれます。ぼくらはなにものにも頼らず、この手で雫先輩のパジャマパンツを下ろさないといけないのだ!
まとめ
ほんのりほどよい雰囲気ゲー期待で購入したのですが、繊細なイメージに似合わぬ予想外のパワーがありました。「花の野に咲くうたかたの」というタイトルの意味はきっと雫先輩のパジャマの中にあったんだなって。
最後にパジャマ以外のことも書いておくと、
なだらかな起伏のあるストーリーと心地良い雰囲気を楽しむゲーム、という感じでした。ハッキリ強い感情は得られないものの、ほどよい楽しさと満足感が得られるお行儀の良いエロゲです。
不満点は、桜花以外のヒロインの個別のあっさり具合と、控えめな演出と、CGの塗り。塗りというか線というか。特にHCGはもうちょっとクオリティ欲しかったんです。
ともあれ、期待通りの穏やかなほどよい作品でした。
次回作はまたヘビーな方向に行くそうで、そちらにも期待です。
新作マダー?(・∀・)

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